Creed 2

 シルベスター・スタローンの代表作「ロッキー」シリーズの第二世代物とも云うべき、「クリード チャンプを継ぐ男」の続編だ。新シリーズの主人公、黒人ボクサーのアドニス・クリードの父親であり、またロッキーの親友であったアポロ・クリードを、「ロッキー4/炎の友情」の試合中に殺してしまったのがドルフ・ラングレン演じるイワン・ドラゴ。その息子ヴィクターが、ヘビー級世界王者になったアドニスに挑戦状を叩きつける。アドニスはチャンピオンベルト防衛と父の死へのリベンジを賭け、ロッキーの反対を押し切りタイトルマッチのリングにあがる・・・。

 と、まあ有りがちな展開ではある。映画のタイトルも邦題では「クリード 炎の宿敵」と、「炎」繋がりで関連性を示している。原題ではシンプルに“Creed Ⅱ”だが、日本の題名は親切、かつ一寸ウエットに過ぎるかな。
 そもそも“Creed”は、この映画では人名ではあるものの、「信念」「主義」特に宗教上の「信条」や「教義」といった意味を持つ普通名詞でもあり、わたしのイメージとしては(あくまでわたしのイメージだが)「引き継がれていくもの」というようなニュアンスが含まれている。映画の内容にぴったりではないだろうか。
 もっとも「ロッキー」“Rocky”にも、「岩のような」「意志の固い」「不動の」「頑固な」「困難な」「問題を抱えた」という意味があるのだから、映画の本質がこれら人名に込められているのはほぼ明らかだろう。さらに“Rocky”には、「(殴られたり、酒に酔って)ふらふらになっている」「グロッキーの状態」という意味もあるようだ。「ロッキー」シリーズで繰り広げられるボクシングシーンを思い出すと、なぜかニンマリしてしまう。
 
 ロッキーがドラゴとのタイトルマッチに反対し、アポロが死んだときのことを“・・・he died right here in my hands.”と嘆くが、字幕では「腕の中で・・・」となっている。よく指摘されることだが、日本語と英語では身体の部位を使った表現が少しズレていて面白い。「強肩」が“Strong arm”になるなどは良い例だ。
 このほか、耳をそばだてて聞いてみると、ボクシングの試合にまつわる英語らしい表現がぽつぽつと入って来る。
 トレーナーがアドニスに「みんなお前を応援している」と激励するのは“This is your house”。「スタジアム全体がお前のものだ」というわけだ。
 ロッキーはテレビでアドニスの試合を観戦しながら「ボディーを打て」、「もっと下だ」と呟くが、よく聞くと“Down stairs!”と言っていた。「下の階」に打つと云うことだろう。

 いよいよロッキーがセコンドに入り、因縁の試合は死闘と化していく。ロッキーはこのとき“・・・give him pain more than gain”と叫んでいたように思う。字幕では「肉を切らせて骨を断て」となっていた。日本語のアドバイスの方が格好いいな、と感じた次第。
 映画はありきたりのストーリー展開をたどるが、前作の「クリード」と同様、迫力のカメラワークとエモーショナルな音楽で、最後まで魅せていく。
 その結末にほっと胸をなで下ろし、充実感を感じたのは、わたしが相当シンプルな人間だからかだろうか。