2001年から始まった新「猿の惑星」シリーズの大詰め、第一作に繋がる作品だ。原題は単に“WAR FOR THE PLANET OF THE APES”となっていて、聖戦やグレートも出てこないが、ウディ・ハレルソンが演じるヒール役の大佐が“This is the Holy War”と宣言するから、日本の配給会社はそこからヒントを得たのだろう。ただし、それならカタカナでも「ホーリー・ウォー」にしても良いはずだ。「グレート・ウォー」は大戦争、特に第一次世界大戦のことを言うのだからと、いちゃもんを付けたくなるのは私の悪い癖か。
映画の中では猿はほとんど手話でコミュニケートし(字幕が付く)、ちゃんと話せるのは主人公のシーザーくらいで、それもゆっくり話すから、英語の勉強には丁度いい。単語も短くて、あまり難しい言い回しもない。その中で、なるほどと思ったのは、シーザーが帰って来られないことを覚悟して口にするセリフ、“I may not make it back.”の”it”だ。英語では”It”を上手く使えれば、表現のバリエーションが大きく拡がる。
今回は、だから、セリフではなく、シリーズのタイトルで英語を掘り下げてみる。
チャールトン・ヘストン主演の記念すべき作品を第一作とする旧シリーズは、「最後の猿の惑星」をもってその名の通り完結となる。つまり、新シリーズのエンディングを飾る(はずの)本作品に相当する映画だが、その原題は“BATTLE FOR THE PLANET OF THE APES”だ。”Battle”と”War”だけの違いなのだが、”War”の方がスケールの大きい響きあり。
「最後の猿の惑星」のひとつ前の「猿の惑星・征服」は“CONQUEST OF THE
PLANET OF THE APES”、その前が「新・猿の惑星」“ESCAPE FROM THE PLANET OF
THE APES”、さらに前が「続・猿の惑星」“BENEATH THE PLANET OF THE
APES”となっていて、各々原題がその映画の内容を表わしていることに、作品を見たことのある方なら気づくだろう。
ちなみに新シリーズの第二作「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」は“RISE OF
THE PLANET OF THE APES”、第三作「猿の惑星:新世紀(ライジング)」はDAWN OF THE PLANET OF THE APESとなっていて、旧シリーズよりもやや曖昧な「雰囲気」表現だ。
さて、今回の映画の最後は、こんなセリフで締めくくられている。
“Son will know who was father... And what
Caesar did for us.”(「息子はやがて知るだろう、どんな父親だったのか。・・・そしてシーザーが我々のために成したことを」拙訳)
どうして、これがドラマの最後の言葉なのだろうと、若干納得がいかなかったが、映画を見たあと少しググって、思い出した。シーザーは、先ほど紹介した“I may not make it back.”のあとで、こう仲間のエイプに頼んでいたのだ。“Make sure my son knows who his father was.”
これこそが、この作品のもうひとつのテーマ、「父と子の愛」をつなぐ言葉なのだ。ネタバレを避けるため具体的には書かないが、愛を成就させたこの映画のエンディングは旧作シリーズのラストよりも、ずっと穏やかで静謐だった。