ワンダーウーマン

  「モンスター」で注目された女性監督が、女性のコミック・スーパーヒーロー、それも男のいないアマゾネス部族の王女ワンダーウーマンを実写化したアクション映画だ。テンポも切れも良く、あっという間にラストシーンを迎える。

 戦闘シーンの合間では、初めて近代の街にやってきた主人公ダイアナ・プリンスのちぐはぐな振る舞いや、男や男女の仲に関するズレまくった知識のおかしさに、大いになごまされる。

 そういえば、英語では「男」と「人間」は同じ単語だな、と改めて気づかされた。ダイアナが男を初めて見たときのセリフは、“You are a man ・・・(字幕では「これが男?」)、そして、ダイアナがいよいよ人間界に出ていくときに、その母が掛ける言葉は、“Be careful in the world of men, Diana. They do not deserve you.” 単数と複数は違っても、結局同じ単語だ。

同じ男性優位社会とはいえ、いちおう「人」という言葉が独立して存在する日本と、神はまず自分に似せて「男」アダムを造ったと聖書で教え、言葉まで同じ欧米とは、「優位」の中味が本質的に違うのではないかと思ったりした。

 上のセリフ “They do not deserve you.”“deserve”は日本語にしにくい単語のひとつだ。ここでは、「あなたが苦労する(命を賭ける)ほどの値打ちもない」といった意味だろうが、ほかの場面でも出てきて参考になる。

 男と女に関わる、ちょっとドキッとするが微笑ましいダイアナの発言に「『肉体快楽論』全12巻を読んだわ」というのがあったが、英語では「肉体快楽論」は“Clio's treatises on pleasure”と言っていた。この「クリオ」を調べてみたら、ゼウスの娘で、人間との間に息子を産んだ女神だった。男と女の交わりに関する先駆者といったところだろうか。

 ゼウスという神は、やたらと子どもを作っているが、この映画のボスキャラもゼウスの息子アレス(“Ares”)だ。ローマ神話では戦いの神マーズ(“Mars”)に相当するそうだ。Marsは勿論「火星」も意味する。燃えるような赤い色からの連想だと聞いたことがある。

一方、ギリシャ神話では戦いの神二人のうち、「知略の女神アテナ」が戦いにおける兵士の誇りと理知的な面を象徴するのに対し、アレスは戦争の残酷さと破壊的な面を現した神だとされているという。モンストなどでもお馴染みのようだが、まさにヒール役にぴったりだ。

さらに、アレスをググったら、「ギリシャ神話に登場する女性だけの戦闘民族アマゾネスはアレスの娘たちで、全てのアマゾネスの祖であるともいわれている」という記載があった。

しかし、この映画では、最後にダイアナがアレスに向かって“Goodbye, brother.”と叫んでいたように、あくまでダイアナはゼウスの娘という設定なのだろう。

 この兄妹の対決シーンをクライマックスとして、美しいダイアナの迫力満点、ダイナミックなアクションには大いに楽しませてもらった。ヒーローものの大好きな方には、是非ともお勧めしたい。

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2017-12-02