映画とミステリー 楽しむついでに英語力UP
映画を楽しみ、ミステリー小説を楽しみ、ついでに英語の力がつけばいい。
そんな気持ちで、映画を見続け、小説を読み続けてきた”わたし”のブログです。

2015年08月

ナイトクローラー

  犯罪や事故現場の動画をテレビ局に売り込むカメラマンたちの内幕、生態を描いた作品だが、むしろ悪漢を主人公にしたピカレスク映画に近い。ちなみに”Picaresque”は元々スペイン語で悪漢の意味、英語では”Villain”だ。でも、期待以上の面白さだった。

 カメラマンたちは夜な夜な警察無線を傍受しながら街を徘徊し、事件や事故の発生を掴むや否やライバル業者よりも少しでも早く現場に到着して決定的シーンを撮影しようと車を飛ばす。夜、うろうろするから、”Nightcrawler””Crawl”は水泳のクロールと同じで、這うことやのろのろ進む意味があるが、そういえば、インターネットでWebを回ってデータを集めるプログラムも”Crawler”だ。

 主人公はモラルの欠如した学歴のない元こそ泥だが、頭だけは切れて、インターネットで身に付けた哲学や経営学の知識を振りかざし、周りの人間を煙に巻くから始末が悪い。(台詞の中では「”On line”で学んだ」と言っている。こういう場合は「オンライン」でいいようだ。)だが、オンラインでは表面の知識しか得られない。モラルや良識は教えられない。
 この映画では、ニュース番組の英語がたくさん出てくる。中でもなるほどと思ったのが映画のコアでもある”Graphic Image”だ。「刺激的な映像」と訳されていたが、改めて”Graphic”を辞書で調べると「生々しい」とか「あからさまな」とかがあった。元々は「図」や「写実的」であったが、テレビで婉曲表現として使われるうちに辞書にも載るようになったのじゃないだろうか。

 ほかに、よく目にする”Breaking News”は「ニュース速報」だし、「モザイクをかける」は”Blur out”のようだ。あと、フェイド・アウトの反対はフェード・イン以外に”Fade up”とも言うらしい。

 映画は、一線を越えた主人公が自分の欲望のままに周囲を操り、やがて信じられない映像をものにする。サイコパスとしか思えない、その行動だが、見ていて徹底ぶりにある種の爽快感を感じたのは、わたしもサイコパスの傾向があるってことか? そういう意味では怖い映画だ。

ナイトクローラー [Blu-ray]
ジェイク・ギレンホール
ギャガ
2016-02-19

 

 ミステリーというより、サスペンス小説だが、ケン・フォレットの名作のひとつだと思う。暗殺者の潜入と逃亡を描く点では、同作者の「針の眼」Eye of the needle や「ジャッカルの日」“Day of the Jackal”と同じジャンルに入るだろう。しかし、この小説にはサスペンス以外に、痛々しくもの悲しい人間ドラマが用意されていて、心打たれる。

 舞台は第一次大戦前夜のロンドンだ。英国と秘密協定を結ぶためにやって来たロシアの皇子を狙う無政府主義者(“Anarchist” には、英国貴族の妻となった女性との間に過去があり、皇子暗殺の企みが進むにつれ蘇る過去の呪縛に、暗殺者もかつての恋人も、現在の夫もその娘も、すべての人間が巻き込まれ、悲劇のクライマックスに向かっていく・・・・・・。

 巧みに追っての包囲網から逃れ、まさに“slip through their fingers”(指の間からするりと抜け)ながら、暗殺者の“Walking a tightrope”(綱渡り、危険を冒す)には手に汗握ってしまう。そして、フォレットの語り口のうまさに思わず唸ってしまう。 

 小説の時代には、英国とロシアの間に既に英露協商Anglo-Russian Entente”があったので、この無政府主義者の目的、つまり協定締結を阻止して、ロシアを戦争から救うという試みは、いずれにしてもかなわなかっただろう。英露協商にフランスを加えた三国協商“Triple Entente”は、やがて、ドイツオーストリア・ハンガリーイタリアの三国同盟“Triple Alliance”と対立して、第一次大戦が勃発することになる。

 ケン・フォレットの作品は、文章も平易で、奇をてらった喩えなども少なく、とても読みやすい。その上、ストーリーの展開が早く、超スリリングだから、次が気になって気になって、どんどんページが進む。特に歴史上の出来事を舞台にした作品が多く、どれも文句なく面白い。今後このブログで紹介する予定だが、この作品以外でも、興味がありそうな作品に、是非英語原文でトライして欲しい。

 

ジュラシック・ワールド

今年2015年は、久々に作られたヒット映画シリーズの新作が続々と公開されている。マッドマックスやターミネーター、年末にはスター・ウォーズが公開予定だ。

この映画も言わずとしれた「ジュラシック・パーク」シリーズの4作目に当たるが、旧作ではオープンされることのなかった恐竜テーマパークがついに開園された、という設定になっている。

そんなパークの新しいアトラクションとして、DNA組み替えで作られた新種の恐竜が、インドミナス・レックスだ。Indominusは英語になく、造語だろうが、Indomitusならラテン語にある。「飼い慣らされていない」“untamed“とか「支配されていない」“unsubdued”という意味らしい。

このインドミナスが暴れ回って、パークは大パニックだが、主人公の少年たちはパークに来る前、母親から冗談半分にこう言われていた。「もし、襲ってきたら・・・・・・逃げるのよ」 ”If something chases you, run!”

このシーンも予告編にあるが、もっと激しい”Run!”も予告編で見られる。パークの運営責任者で、少年たちの叔母が必死で叫ぶ。「逃げて!」 以前から不思議に思っていたが、英語では「逃げる」ときはいつも「走る」なのだろうか。(走らず、逃げるのは無理か)

もうひとつ、前から腑に落ちていなかったのは、“Jurassic Park”「ジュラシック」の由来であるジュラ紀には、インドミナス・レックスは勿論、この映画でも重要な役どころを果たすティラノザウルスやヴェロキラプトルは棲息していなかったことだ。そのあとの地質年代「白亜紀」Cretaceous に生きていた恐竜たちだから、正確には「ジュラシック」じゃない。でも、「白亜紀パーク」ではあまり迫力が無いか。

ともかく、映画は息つく暇なくクライマックスへ。結末の詳細はここではあえて書かないが、「自然」や「野生」の問題を解決できるのは「自然」や「野生」だけなんだ、と納得させられるエンディングだ。


ジュラシック・ワールド ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
クリス・プラット
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2016-02-24


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